泪橋・・・

001790-1

ALOHA.

 

「今日は予報通りに一日中雨、冷たい雨だ。泪(なみだ)雨って感じ。」

 

そう言えば、台東区の山谷に「泪橋(なみだばし)」ってのがあったな。

昔々、南千住に処刑場があって・・・。

罪人が家族と最後の別れをして、この橋を渡り処刑場に向かった。

 

「現在は、全てを無くしてしまった人が泪橋を渡って山谷へ向かう。」

 

昔、社会人3年目頃に興味本位で山谷で飲んだ後にドヤに泊まった。

※ドヤ(俗称)=簡易宿所

3畳一間、小さなTVと布団一式そしてハンガーが2本。

靴はドアの外。

 

朝7時に起きて・・・二日酔いの頭で「会社に行かなきゃあ。」

「ありゃーーーっつ!」

ハンガーに掛けていたスーツとYシャツ、そしてネクタイが無い!

ドアの外で脱いだ靴が無い!

そう、全て盗まれた。

財布等は敷布団の下に入れていたので無事だった。

 

パンツ一丁で小さなフロントの窓口に行き、

「あのーっ、スーツや靴が無くなった。」

「あー、やられちゃったね。」

「鍵をちゃんと掛けたかい?靴は部屋の中に入れとかないと。」

「鍵を掛けたかな?・・・これじゃあ会社に行けない。」

「取り敢えず、私のジャージ上下を貸してあげるよ、後サンダルも。」

「スーツ姿でこの街に来ちゃあ駄目だよ。」

 

汚いジャージ上下にサンダル履きで・・・取り敢えず帰宅。

自宅に帰りシャワーを浴びて・・・スーツに着替えて会社へ。

 

数日後の土曜日、洗濯したジャージ上下とサンダルを返しに行った。

「おう、返しに来ると思わなかった。じゃあこれをあげるよ。」

と言って1枚の紙をくれた。

その紙には「パン券」と書いてあった。

「何ですか?これは?」

「いやーあ、宿泊料が払えない人が、このパン券を置いて行くんだよ。」

「これを食堂に持って行くと定食が食べられるよ。」

「ありがとうございます。じゃあ食べてから帰ります。」

「ビールは、その券では飲めないからね。酒類は現金でな。」

「分かりました、ありがとうございます。」

 

「懐かしいな?でも非常に怖い街でもある。そして非常に臭い街だ。」

 

MAHALO.